2008.04.30 Wednesday
耳カット騒動 野良猫の去勢目印めぐり
2008年4月30日 13時49分
世田谷区で捕獲した野良猫の様子をうかがうボランティアの伊藤幸子さん=東京都世田谷区で
繁殖力が強い野良猫に不妊・去勢手術をした目印として耳に切り込みを入れる「耳カット」について、日本獣医師会世田谷支部(東京都世田谷区)が「虐待になる」などとして拒否する方針を打ち出した。一方、野良猫の不妊・去勢に取り組むボランティアからは「外見で判別できるようにすべきだ」と異論を唱える声が出ており、議論は平行線をたどっている。 (原昌志)
耳カットは、耳の一部をV字などの形に切り取る目印で、捕獲や手術のための開腹を何度もするのを防ぐのが目的。猫嫌いの住民に対策を講じていることを示して、理解を求める狙いもある。
動物愛護に取り組む社団法人日本動物福祉協会の担当者は「猫へのストレスを考えると、やむを得ない手段として海外でも認知されている」と言う。
獣医師会世田谷支部は二月、世田谷区が野良猫の不妊・去勢の公費助成(雌一万円、雄五千円)を始めたのを機に耳カット拒否の方針を決定。手術歴の判定には、マイクロチップを埋め込むなどの方法を採用している。
天野芳二支部長は「耳カットは法的には虐待ではないかもしれないが、一般の人がどう感じるか」と疑問を提示。「チップは国際的にもペットや野生動物の個体識別で使われている。われわれはボランティアだけを相手に仕事をしているのではない」と話す。
区は同支部と協定を結んでおり、助成を受けるには支部会員の動物病院で手術しなければならない。
ボランティアの人たちは「外見で識別できないと、捕まえなければならないが、野良猫は警戒心が強い。公費を使うならば現場の声をもっと聞くべきだ」などと訴え、見直しを求める署名運動も起きている。
世田谷保健所は「今のところ、(公費助成の)申請は見込み通りある。不都合があれば、その時点で見直しを検討する」と、当面推移を見守る考えだ。
■識別方法『統一基準ない』
「猫にとってもボランティアにとっても、負担が大きくなる」
世田谷区の野良猫の不妊・去勢ボランティアをしている伊藤幸子さん(50)は、「耳カット」拒否の影響を心配する。捕獲器を仕掛け深夜、未明まで待ち伏せして野良猫を捕獲するが、外見で分からなければ、手術済みの猫を追い掛けることになりかねないからだ。
二〇〇六年度の都の調査では、都内には約十五万匹の野良猫がいると推計、前回の一九九八年度調査に比べ約四万匹増えた。猫は年間二−四回の発情期があり、一回に三−六匹の子を産む。放置すれば、ねずみ算式に増えるため、不妊・去勢手術は欠かせない。
野良猫の不妊・去勢は手術代二万−三万五千円をボランティアが手弁当で負担するなどしてきたが、ふん尿など住民からの苦情が多いことなどから、都内では昨年四月現在で二十七区市町村が公費助成を実施している。
手術後の識別方法は「(手術が)草の根運動で始まった経緯もあり、各地で話し合ってもらっている。統一基準はない」(都環境衛生課)という。
財団法人日本動物愛護協会の会田保彦事務局長は「飼い猫なら、安易に捨てるような飼い主に責任を自覚してもらうためにもマイクロチップは有効だ。野良猫の手術の有無判別だけなら耳カットでいいのでは」と話す。
(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008043090134941.html
by 伽依
世田谷区で捕獲した野良猫の様子をうかがうボランティアの伊藤幸子さん=東京都世田谷区で
繁殖力が強い野良猫に不妊・去勢手術をした目印として耳に切り込みを入れる「耳カット」について、日本獣医師会世田谷支部(東京都世田谷区)が「虐待になる」などとして拒否する方針を打ち出した。一方、野良猫の不妊・去勢に取り組むボランティアからは「外見で判別できるようにすべきだ」と異論を唱える声が出ており、議論は平行線をたどっている。 (原昌志)
耳カットは、耳の一部をV字などの形に切り取る目印で、捕獲や手術のための開腹を何度もするのを防ぐのが目的。猫嫌いの住民に対策を講じていることを示して、理解を求める狙いもある。
動物愛護に取り組む社団法人日本動物福祉協会の担当者は「猫へのストレスを考えると、やむを得ない手段として海外でも認知されている」と言う。
獣医師会世田谷支部は二月、世田谷区が野良猫の不妊・去勢の公費助成(雌一万円、雄五千円)を始めたのを機に耳カット拒否の方針を決定。手術歴の判定には、マイクロチップを埋め込むなどの方法を採用している。
天野芳二支部長は「耳カットは法的には虐待ではないかもしれないが、一般の人がどう感じるか」と疑問を提示。「チップは国際的にもペットや野生動物の個体識別で使われている。われわれはボランティアだけを相手に仕事をしているのではない」と話す。
区は同支部と協定を結んでおり、助成を受けるには支部会員の動物病院で手術しなければならない。
ボランティアの人たちは「外見で識別できないと、捕まえなければならないが、野良猫は警戒心が強い。公費を使うならば現場の声をもっと聞くべきだ」などと訴え、見直しを求める署名運動も起きている。
世田谷保健所は「今のところ、(公費助成の)申請は見込み通りある。不都合があれば、その時点で見直しを検討する」と、当面推移を見守る考えだ。
■識別方法『統一基準ない』
「猫にとってもボランティアにとっても、負担が大きくなる」
世田谷区の野良猫の不妊・去勢ボランティアをしている伊藤幸子さん(50)は、「耳カット」拒否の影響を心配する。捕獲器を仕掛け深夜、未明まで待ち伏せして野良猫を捕獲するが、外見で分からなければ、手術済みの猫を追い掛けることになりかねないからだ。
二〇〇六年度の都の調査では、都内には約十五万匹の野良猫がいると推計、前回の一九九八年度調査に比べ約四万匹増えた。猫は年間二−四回の発情期があり、一回に三−六匹の子を産む。放置すれば、ねずみ算式に増えるため、不妊・去勢手術は欠かせない。
野良猫の不妊・去勢は手術代二万−三万五千円をボランティアが手弁当で負担するなどしてきたが、ふん尿など住民からの苦情が多いことなどから、都内では昨年四月現在で二十七区市町村が公費助成を実施している。
手術後の識別方法は「(手術が)草の根運動で始まった経緯もあり、各地で話し合ってもらっている。統一基準はない」(都環境衛生課)という。
財団法人日本動物愛護協会の会田保彦事務局長は「飼い猫なら、安易に捨てるような飼い主に責任を自覚してもらうためにもマイクロチップは有効だ。野良猫の手術の有無判別だけなら耳カットでいいのでは」と話す。
(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008043090134941.html
by 伽依
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